技術コラム

tech-column


近年、AIサーバー、5G通信、自動運転(EV)などの急速な発展により、電子機器の高性能化・小型化が劇的なスピードで進んでいます。しかし、その進化の裏で製造業全体を悩ませている最大のボトルネックがあります。それが「熱問題」です。
本コラムでは、現代の製造業が直面している熱課題の現状と、従来の対策が抱える限界、そして今後の展望として注目を集める新たな放熱アプローチについて解説します。

深刻化する熱問題と「熱密度」の壁

機器の高性能化は、ICチップの高集積化と微細化によってもたらされています。これにより、トランジスタから発生する熱が極小のスペースに集中し、単位面積あたりの発熱量、すなわち「熱密度」が異常なまでに上昇しています。
熱は電子部品にとって最大の敵です。適正な温度を超えると、誤動作や熱暴走による性能低下を引き起こすだけでなく、製品寿命を大幅に縮めてしまいます。 設計現場では「本当はもっと小型化したかったが、熱を逃がすスペースが必要なため筐体を大きくせざるを得なかった」というケースが頻発しています。パワー半導体(SiC、GaN)の普及や、データセンターのGPUの高負荷稼働においても、この「熱をどうやって効率的に逃がすか」が、製品競争力を左右する最重要課題となっています。

従来の熱対策とその「限界」



これまで、熱対策の基本は「熱伝導(Conduction)」と「対流(Convection)」の2つが主役でした。
•    熱伝導: チップから発生した熱を、熱伝導シートやグリス(TIM)を介してヒートシンクや筐体へ移す(物理的な熱のバケツリレー)。
•    対流: ヒートシンクに伝わった熱を、ファンで風を当てて空気中に逃がす(空冷)、あるいは液体で冷却する(液冷)。
これらのアプローチは長年進化を続け、アルミナや窒化ホウ素を用いた高熱伝導材や、高度な水冷システムなどが開発されてきました。 しかし現在、こうした「伝導と対流」による冷却は技術的な飽和状態に達しつつあります。発熱量に対して物理的な熱移動の限界が近づいており、開発現場からは「あと5℃でも下げられれば寿命が延びるのに、これ以上は下がらない」といった悲鳴が上がっています。

今後の展望:第3の熱移動「放射」の活用

伝導と対流だけでは限界が見え始めた今、今後の熱対策はどうなっていくのでしょうか。 一つの方向性は、システム全体での最適化(ハイブリッド冷却)です。そしてもう一つ、これまで電子機器の冷却では補助的な扱いにとどまっていた第3の熱移動「放射(輻射:Radiation)」を活用するアプローチが、次世代のブレイクスルーとして注目を集めています。
放射とは、熱エネルギーを赤外線などの電磁波に変換して直接空間へ放出する現象です。 宇宙空間など対流が起きない真空環境では必須の技術ですが、近年の材料科学の進化により、この「放射」の力を地上での電子機器冷却にも応用しようという動きが活発化しています。既存の「熱伝導」の技術と「熱放射」の技術を掛け合わせることで、熱の逃げ道を増やし、従来では届かなかった数℃〜十数℃の温度低減を実現できる可能性を秘めているのです。(アレニウスの法則によれば、機器の温度が10℃下がれば製品寿命は約2倍に延びると言われており、数℃の低減は極めて大きな価値を持ちます)

敵を味方に変える次世代ソリューション「Ruomei」



こうした「熱放射」を活用した最先端の放熱技術として、現在日本のトップメーカーから注目を集めているのが、台湾の若美科技(Taiwan Ruomei Technology Corp.)が開発した放熱ソリューションです。
Ruomeiの放熱材は、バッキーボール(フラーレン)を中心に、高い熱伝導性を持つ窒化ホウ素や、絶縁性を持つアルミナを精巧に組み合わせた独自の複合ナノ材料(特許技術)を採用しています。 熱源が45℃以上になると分子が共振運動を起こし、熱エネルギーを遠赤外線に変換して積極的に放射します。その放射率は最大0.98(完全な黒体に近い数値)を誇り、従来の「熱を伝える」だけでなく「熱を放つ」ことで、チップ表面や筐体からの未開拓だった放熱経路を確立します。実際に、半導体パッケージのピーク温度を最大14.3℃低下させた実証データもあります。

三位一体の特性と導入のしやすさ



さらに特筆すべきは、「熱を伝え、熱を放ち、電気を通さない(完全絶縁)」という三位一体の特性と、導入のしやすさです。 フィルムシートやスプレーコーティング(インク)、さらには半導体の封止材(エポキシ樹脂)やポッティング材に混ぜ込むなど、多彩な形態での提供が可能なため、既存の設計や製造プロセスを大きく変えることなく、後加工や追加の「+α」の対策として導入することができます。
限界を迎えつつある従来の熱対策に、「放射」という新たな次元をプラスするRuomeiの技術。自社の製品開発において、熱問題で行き詰まりを感じている方は、一度この新しいアプローチを検討してみてはいかがでしょうか。

マブチ・エスアンドティーでは、Ruomeiの革新的な放熱ソリューションをはじめ、お客様の課題に応じた最適な熱対策をご提案しています。サンプルテストのご相談など、ぜひお気軽にお問い合わせください。